中生代になると恐竜が全盛期となる。
そのころ、私たちの祖先である哺乳類は、恐竜に圧倒されるようになり、生活の時間帯を恐竜が眠る夜に移していた。
目が見えない暗闇での生活で必要となったのは嗅覚である。嗅覚を発達させながら一億年を夜行動物として生き延びてきた。
夜間に活動するために、聴覚も発達させてきた。
その後、恐竜が絶滅し、昼間の世界で生きていけるようになった結果、視覚を発達させてきたのである。
哺乳類のほとんどは世界のなかを二色で見ているのに対し、ヒトやゴリラ、ヒヒというようなサルたちは三色視を獲得した。
逆に発達した敏感な嗅覚を捨ててしまった。
生物は、ある機能を進化によってつくり出したり、それを維持するためには膨大なエネルギーを必要とする。
そのため人類はより強力な視力を維持する代わりに、嗅覚を退化させたのである。
(山口創「最良の身体を取り戻す」参照)
子どもたちの嗅覚は敏感ににおいを感知します。山の中で「けもののにおいがする」「変なにおいがする」するとそこには鹿がいる。というように環境の変化をにおいで感じます。
嗅覚は命を守る感覚器官だと言われ、昔は火山が噴火することがにおいでわかったそうです。
保育園の子どもたちは、落とし物の落とし主をにおいでさがします。「・・ちゃんのにおいがする。」その鋭さと言ったらすごいです。
五感の中で唯一、嗅覚情報だけは直接海馬に伝達され、記憶と感情の両者を司っている大切な感覚です。
秋のイチョウの実が落ちるにおい、雨上がりのにおい、季節の移り変わりのにおい、その記憶は大きくなり、同じにおいに出会ったとき、楽しかった幼いころの経験を思い出し、時には、命を守るということもあるのだと思います。
そして、お母さんのにおい。
先日、年取った母の昔の衣類から、若かったころの母のにおいがし、懐かしいきもちになりました。
子どもたちが大きくなり、優しかったお母さんのにおいに出会った時、その時の感情がよみがえり大好きだったお母さんとの記憶をよみがえらせることでしょう。
五感を育てることが大切な乳幼児期には、特に人工的な香料をつかった洗剤や柔軟剤などの使用は避けたいですね。
センス・オブ・ワンダーの一節
視覚だけでなく、その他の感覚も発見とよろこびへ通ずる道になることは、匂いや音が忘れられない
思い出として心にきざみこまれることからもわかります。・・・やがてロジャーが大人になり、ながい間海からはなれていて久しぶりに海辺に帰ってくるようなことがあったら、
海のにおいを大きく吸い込んだとたんに、楽しかった思い出がほとばしるようによみがえってくるのではないでしょうか。
嗅覚というものは、ほかの感覚よりも記憶をよびさます力がすぐれていますから、この力をつかわないでいるのは、たいへんもったいないことだと思います。
刈りとった草の上でねころんだこと。
となりの大きなイチョウの木から銀杏がいっぱい落ちていて「くさいにおいがする。」
でもそこには宝物のヒマラヤスギのバラの形をしたすぎぼっくりを見つけたときの嬉しかったこと。