くうき

2024.1.3

まどみちおさんの詩です。

空気

ぼくの 胸の中に

いま 入ってきたのは

いままで ママの胸の中にいた空気

そしてぼくが いま吐いた空気は

もう パパの胸の中に 入っていく

同じ家に 住んでおれば

いや 同じ国に住んでおれば

いやいや 同じ地球に住んでおれば

いつかは

同じ空気が 入れかわるのだ

ありとあらゆる 生き物の胸の中を

きのう 庭のアリの胸の中にいた空気が

いま 妹の胸の中に 入っていく

空気はびっくりぎょうてんしているか?

なんの 同じ空気が ついこの間は、

南氷洋の

クジラの胸の中に いたのだ

5月

ぼくの心が いま

すきとおりそうに 清々しいのは

見わたす青葉たちの 吐く空気が

ぼくらに入り

ぼくらを内側から

緑にそめあげてくれているのだ

一つの体を めぐる

血の せせらぎのように

胸から 胸へ

一つの地球をめぐる 空気のせせらぎ!

それは うたっているのか

忘れないで 忘れないで・・・と

すべての生き物が兄弟であることを・・・・と

自然のなかに出かけていくと、この詩を思い出します。

森の植物たちが、私たちの吐いた空気をすって

木々の吐いた空気が 私たちにはいってくる。

だから、自然のなかにいくと 自分の胸のなかが清々しく清らかになった気がする。

人も人と、人と自然も、すべての生き物がつながっている。

そんな 気持ちにさせてくれる詩です。