2022.5.13
あべ弘士「エゾオオカミ物語」
一羽の歳とったフクロウがモモンガの子どもたちにお話しをする場面から始まります。
「オオカミは、とてもいいやつだったんじゃよ。だがのお……。」
100年前、エゾオオカミとエゾジカは自然のなかで良いバランスでくらしていました。
アイヌの人々はオオカミはもちろんこわいけれど、オオカミも同じこと。お互いにゆずりながら生きていました。
ある時、大雪でシカがおおぜい死んでしまいます。
その時、開拓に人間がいっぱい移住してきて、牧場に馬を飼いました。
食べ物がなくなったオオカミは牧場の馬を襲い、馬を守るためにと人間はオオカミを殺してとうとう一頭もいなくなってしまいます。
その頃からシカが少しずつ数を増やしていきます。オオカミがいなくなって、シカはどんどん増え、人間は増えてしまったシカが森や畑を食い荒らすので怒っています。
今度はシカが悪者です。
「だが、そうしたのはいったいだれなんじゃろう。」とフクロウの言葉でしめくくられます。
お話をジッと聞いていた年長さんたち、何気なく子どもたちにいったいだれなんだろうね?
と問いかけると。「オオカミ!」とこたえます。
自分たち人間はどうなのだろう?と考えることはできない年齢なのですね。
目に見えていることしか見えない。
だからこそ、人の気持ちという見えない部分をわかろうとする経験、察しようとする経験の積み重ねが大切です。
絵本はその年齢や、今置かれている自分の状態などで受け取り方や感じ方が変わります。
大人も考えさせられる素晴らしい絵本でした。挿絵も
小学生にも読んでみようと思います。