巣立つ子どもたちへ (会報誌より)

~優しさの土台を育てる~
副園長 山岸雅子
♪「はる」
じゅずだまも もうすぐはる
やなぎのめはもうしろい 
わたにつつまれているから 
それがはるのしょうこ
おおいぬのふぐりはもうはる わたしもはる
   (さなだあきこ詞 林光曲)
 名古木の春は素敵です。子どもたちの散歩道には、梅の花が咲き、土手にはかわいらしいオオイヌノフグリが一面に咲き、美しい田園風景が広がります。
豊かな自然は五官(五感)を育て子どもの感性を育てます。
 ある日のこと「パーティーをしよう!」子どもたちが自分たちで計画をたてました。その計画に大人が巻き込まれ、名古木のドン会の里山でパーティーを行いました。一人の子どもの夢がみんなの夢になったそんな経験でした。棒にチーズや柿をさして落ち葉のたき火で焼いたこと。直火で焼いたお肉はまっ黒だったけどみんなで食べると最高に美味しかった。日が暮れるまで遊び呆けたあの日は、きっと子どもの心の中に深く刻み込まれたことと思います。
 そんな子どもたちとの生活を通して「言葉」の大切さを強く感じました。泣いている子にサッとかけより、「どうしたの?」「大丈夫?」と背中をなでながらなぐさめる年長の姿がありました。その言葉は優しくて、泣いているその子は涙をぬぐいます。言葉は単に耳に届く音のように思われますが、一つの言葉は多くの情報を持ち、その情報は皮膚を通して脳に伝達されると言われています。だからこそ同じ言葉であっても、発する人が違うと受け取られ方が異なってしまうのです。「優しい言葉」は、心から相手のことを尊敬し、相手の気持ちに寄り添いたいと思って発せられます。そして、その「言葉」は受けとったものを幸せな気持ちにするだけでなく、発したものをも幸せな気持ちにします。そんなやさしい年長さんが小さい子たちは大好きでした。
 仲間との遊びと生活を通して子どもたちは、笑い合い時にはぶつかり合います。その経験の積み重ねは、人を信じる力、人を認める力、人を思いやる力、相手を理解するという力を育てます。そして仲間のなかで自分が認められた時、その経験は大きな自信となり、自分の力を発揮することができるようになり、”みんなも素敵だけれども自分も素敵”、そんな風に他者を心から認めながらも、自分を肯定的にとらえられる子どもに育っていくのです。
 心がしっかり育ってきた年長たちに最後に与えたいものとして、斎藤隆介さんの「モチモチの木」「八郎」「三コ」「花咲き山」を読み聞かせました。優しい心があれば、人のために何かをしたいという気持ちが自然とうまれ、いざという時には優しさを力に変えることができるのです。「モチモチの木」では、弱虫の小さい豆太が大好きなおじいちゃんを助けるために、勇気をふりしぼってお医者さまをよびに真っ暗な山道をかけおりていきます。その夜豆太が見たものは、勇気のある子だけが見ることができると言われている灯りのともったモチモチの木だったのです。
人はひとのために何かができたときに大きな喜びを感じ自分自身も幸せを感じるのです。私はこの子どもたちの優しさはたくましさであること確信しています。
 最後に保護者の皆さまにお伝えしたいことは、つい大人は先々子どもが失敗することを恐れて心配し、その子がうける困難に先回りをしてしまいがちです。しかし、今転んでも自分の力で立ち上がる経験の積み重ねこそがその子の生きる力を育てるのです。はげまし、見守り、時には背中を押してあげてほしいと思います。
 人としての、優しさの土台がしっかりと育って卒園を迎えます。
 2019年3月23日、4人の年長がハレノヒ保育園を巣立ちます。
心から卒園おめでとう。